OSCON2006レポート

もはや賞味期限が切れていそうですが、OSCON2006のレポートです。

今回のOSCONは、メディアでもあまりレポートされていないようですが、NewsForge.comの和訳記事がOpen Tech Pressに出ていますので、こちらもどうぞ。

Open Data

会議のタイトルがOpen Source Conferenceということを反映して、会場の雰囲気は、様々なものを公開して、皆に使ってもらい、それをベースにして、さらに新しいものを生み出していこう、というものでした。また、キーノードでは、これまでのOpen Sourceのようにソースだけではなく、その上のデータも公開しよう、というOpen Dataというキーワードが出てきていました。
Open Sourceのような公開の流れというのは、IBM PCのようなハードから始まり、外部仕様である各種インターフェイス(PCIのようなハード、TCP/IPのようなネットワークなどなど)が続き、そして、この10年はOpen Sourceとしてソースが続いています。Open Dataは、さらにその上で集められたデータが公開されるということのようです。その公開されたデータを使って、いろいろなツールやサービスを作っていこう、というわけです。

ただ、企業として、このようなオープンソースに関わっていくビジネスモデルとしては、どんどん難しくなるのかなぁ、という印象があります。前職でオープンソース関連の仕事に関わったことのがあるのですが、それなりの規模の会社だったので、色々と根拠を求められて、苦労した経験があります。はたして、Open Dataとなった時には、どのようなビジネスモデルを考えればいいのか、また頭を悩ますことになりそうです。

各セッションの話

いろいろなところで言われているように、OSCONのような大きな会議では、まったく新しい話があるわけではなくて、あまり知らなかったことの詳説や、事例紹介とか、実際に作っている人の話を聞いたりできることが価値が中心になっている印象を受けました。

たくさんあったセッションの内、いくつか面白かったものをピックアップしてみました。

MySQL 5.1 indepth & MySQL Cluster

MySQL ABは、本当に幅広く使われていることを反映しているのか、関連セッション数も多かったです。

MySQL 5.1での新機能・改善点の紹介や、オープンソースになったMySQL Clusterの機能や内部の動作の話がありました。はてなでも、まだクラスター関連の機能は、それほど有効活用できているわではないので、いろいろテストして、導入を検討していく必要がありそうです。

プレゼン資料は、こちらに公開されています。

Linux File Systems

IntelLinux Kernelを開発している人の話です。IntelせよIBMにせよ、アメリカのIT系の大企業は、Linuxに貢献するのが、まったく珍しくないですね。

内容は、ext2, ext3, reiserfs, xfsのそれぞれの得失と、各種サーバに適したファイルシステムの選択基準について、のお話でした。細かい推奨オプションの話があったのが、細かくいい情報でした。詳しく知りたい方は、プレゼン資料を眺めてみるといいと思います。

プレゼン資料は、こちらに公開されています。

(Googleでの?)Subversionの使い方

Googleの人によるSubversionの話です。バックアップは、svnadmin hotcopy後にrsyncでするといい、というあたりが、ちょっとしたTipsです。

Hacking Apache in Yahoo

この人は、あちこちでYahooで使われている改造版Apacheの話をしているようで、今回のプレゼンも以前のものと同じようです。ただ、私は初めて聞いたので、なかなか面白かったです。

内容は、パフォーマンスを最大化するために、極力無駄を除くための改造をしているという話です。例えば、ログの出力のフォーマットを、生データを必要最低限の加工のみで出力するようにしておき、人が読むときに読みやすい形に整える、というような改造です。パフォーマンスを改善するためには、これだけの努力が必要なんだなぁ、というのが、よく分かります。

プレゼン資料は、こちらに公開されています。

Djinni 2.1: Approximating NP-Complete Problems, Fast


OSCONは、ハッカーばかりが集まっていますので、あんまりアカデミックな雰囲気はないのですが、NP完全問題の話がありました。

あまりNP完全のアルゴリズムには詳しくないのですが、アニーリングによって、効率的に最適解を探す、という話っぽいです。ただ、アニーリングによる手法ってのは、珍しくないので、なにが新しいかまでは把握できませんでした。

コードは、ここで公開されているようです。

その他

id:mizno_takaakiにから「User Experience, Pain-Free」「When Interface Design Attacks!」が面白かったと聞きました。

ユーザインタフェースをどう設計するか、というテーマで、「ユーザにこれをさせよう」ではなく「ユーザを助けよう」という考え方が重要、とか、ユーザの行動パターンをトレースするべき、とか、どのような設計がユーザが直感的に操作できるか、という、なかなか示唆に富んだ話のようです。

プレゼン資料も下記で公開されています。これは、お勧めです。

http://www.slash7.com/articles/2006/08/02/oscon-2006-interface-uxp-presentations

あと、Perl6周りの話がいろいろあり、セッションの人気はすごいあったのですが、Perlらしいと言えばPerlらしい記号が、さらに導入されて、個人的には、ちょっとどうかなーと思いました。rubyいいかも、と思ったりしました。

というところで、OSCONが終ったのですが、なかなか刺激的で面白い会議でした。これまでの出たことのある、ビジネスよりの会議とか、アカデミックな学術系会議とは、また別の雰囲気があり、特にハッカーらしい、自分達で世界を変えてやろう!という意気込みが感じられるのが、OSCONのいい所だと思います。