プロスポーツチームを志向するNetflixの脱ルールのカルチャー「No Rules Rules」

今年読んだ本は今年のうちにレビューしてしまおうシリーズの第三弾「No Rules Rules」です。

No Rules Rules

自分が初めてNetflixを知ったのはDVD郵送レンタルサービスだったころで、当時と今ではビジネスモデルはまったく変わってしまっています。ピボットしながら外部環境の変化を上手く活かしてイノベーションと成長に繋げ続けた源泉となったのはその企業カルチャーで、「No Rules Rules」ではカルチャーの詳細や背景、どのような効果を生んでいるかについて書かれています。

中でも特に有名なものは「有給や経費を自分の判断で行使することできる」「市場トップの報酬を支払う」の2つだと思います。

有給・経費については従業員を信頼し、判断のスピードをあげ、結果としてビジネスを成長させるための仕組みです。できる人にはどんどん権限を移譲して自ら判断し成果を出してもらう。成果が出ない人には、チームから外れてもらう、つまりNetflixを辞めてもらう、という考えです。(ちなみに成果が出ない = 失敗しない、という単純なものではなく総合的に判断されるようです。) ちなみに、有給や経費は自分の判断で使うことができるとは言え、"best interests in Netflix"(Netflixのためになっているか)が満されているか、ということが事後にチェックされるようです。

報酬については、最高の報酬を出すことでトップタレントを引き付けるための仕組みです。定期的な昇給プロセスについても、市場価値で決めるため期ごとのパフォーマンスでは決めないポリシーとしており、パフォーマンスによって上げたり下げたりはせず、市場価値が上がれば上げる、上がっていなければ上げない、としているようです。

このようなカルチャーの元で、現場に権限移譲しempowermentする。そのためには、しっかりと従業員が会社の戦略とalignし、依存を減らす (Highly aligned, loosely coupled)ことが大事とされています(このあたりソフトウェアアーキテクチャの議論に通じるところがありますね)。また誰かがなにか失敗した際は、その人を責めるのではなく必要なcontextを共有できなかったことを問題とし改善を進めます。現場への権限移譲を進めることは一般的になってきていると思いますが、そのためにcontextでリードする、という考え方は参考になります。Netflixでは、全社でのalignを深めるためにCEOのReedが全VPとの1時間の1on1を毎四半期するために年500時間、全Directorとの30分の1on1を毎年するために年250時間、計750時間費やしている、とのことです。ここまで時間的コストをかけているのはすごいですね。

Netflixが志向しているのは、プロのスポーツチームのような組織で、最高のメンバーを育て最高のチームを目指しており、その状態を"High talent density"と表現しています。 そのためにもいわゆる“Brilliant Jerk”には居場所はない、としており、“難しい人”が1人入るとチームの生産性が30-40%低下するような状況ではその人は真っ先にリストラされることになるのでしょう。

これらのカルチャーはアメリカの解雇が容易にできる雇用契約(Employment-at-will)とセットとなっていると思われ、年間に辞めさせられる人は8%という数字が出ていました。自分から辞める人は3-4%で、計12%程度の離職率という業界標準的な数字となっているようです。この数字が多いか少ないかはいろいろな解釈が可能かと思います。(後半で日本やフランスのような解雇が難しい労働法の国に進出した際の話も出てくるのですが、このあたりの機微については特になにも記載がなかったのは残念でした。)

これらのようにNetflixのカルチャーはプロのスポーツチームのような状態を志向した一つの振り切ったモデルになっていると思います。これを見習うにせよ、見習わないにせよ、会社として目を見張る結果を出していることは事実であり、知っておくことは価値があると思います。(同時に一部だけ断片的にコピーするのは良くない結果を招くだけとも思いますが..)

これらのようにNetflixのカルチャーはかなり強烈なもので、なかなか真似をするのは難しいのですが、一つフィードバックのガイドライン(5A Feedback guidelines)はどこでも役に立ちそうなので紹介します。

  1. Aim to assist (その人のためになることを目的とする)
  2. Actionable (アクションに結びつけることができるようにする)
  3. Appreciate (フィードバックをする際に敬意を持つ)
  4. Accept or discard (フィードバックを受け入れるか受け入れないかは、受けた側が判断する)
  5. Adapt (結果を得るために、その場のカルチャーに合わせたフィードバックを行う)

立場に関わらず正直なフィードバックをお互いにすることで、より良い状態を目指す、というのは成果を出すために大事なことで、この5A Feedback guidelinesは汎用性が高く有用なものだと思います。

Netflixのカルチャーについては、採用ページにも詳細が載っていますので、こちらからもどうぞ。